御射鹿池とは?
御射鹿池(みしゃかいけ)は、長野県の茅野市にあるため池です。
ため池百選にも選定されていて、周辺は八ヶ岳中信高原国定公園にも指定されています。
冷たい水を溜めて温め、農業用水として使用できるようにする目的で、昭和8年に作られました。酸性が強い水質のため、魚などは生息できない池です。
奥蓼科と呼ばれる山奥にある小さな池なのですが、この場所が知られるようになったのは、画家である東山魁夷の描いた一枚の絵です。
湖面に木々が映る景色の中に、一頭の白馬がいる絵。
「緑響く」です。
(画像出典:amazon.co.jp)
とても有名な絵で、おそらく目にしたことがある人も多いとは思います。
この絵の場所が、御射鹿池なんです。
10年ほど前には、吉永小百合さんが出演していた、液晶テレビAQUOSのCMでも登場していますので、そちらで見覚えのある方も多いかとも。
(画像出典:sharp.co.jp)
東山魁夷は横浜生まれの神戸育ちなのですが、大学生のときに長野の木曽を訪れて以来、その美しい自然に魅了され、何度となく信州に足を運ぶようになったそうです。
そして数々の名画を信州にて残し、「信州は私の作品を育ててくれたふるさと」とも言っています。現在、長野市には東山魁夷館もあります。
東山魁夷が愛した信州の蓼科にて描いた「緑響く」。
御射鹿池は、そんな絵画の中の世界を現実に体感できる場所です。
御射鹿池の魅力
僕は今年の5月、嫁を伴い御射鹿池までドライブに行ってきました。
国道299号線から横谷観音と大瀧神社いう展望台のある場所に立ち寄り、そこから御射鹿池に向かいました。横谷観音と大瀧神社については、僕が別で書いているこちらのブログで紹介しています。
横谷観音からは車で10~15分ほど。
御射鹿池には30台ほど停められる駐車場があります。
車を停め池へと向かいます。少し遠めからでも素敵な景色です。
池の手前には柵があり、近づけないようになっていますので、観られるのはこれくらいの距離からになります。
御射鹿池はため池ですが、山奥にある湖、といった感じです。
池に沿って歩道を歩いて行きますと、御射鹿池についての説明がありました。
道路を挟んだ反対側には、バスなど大型車専用の駐車場も完備されています。
「緑響く」はこの辺りからの景色でしょうか。
風がないと波が立たず、水面に木々が映るんですね。
少しでも風が吹くと波が立ってしまい、水面の木々も揺れてしまいます。
手前に生えた一本の白樺越しに見る御射鹿池も素敵です。
さらに下の方に移動しつつ撮影。向こうに見える山も綺麗です。
池の下は、こんなふうに川になっています。
下にも御射鹿池の案内がありました。池の環境維持のため、動植物の採取禁止や、立ち入り禁止の旨についても書かれています。
池から流れていく水の音が気持ちいいです。
5月は新緑が綺麗ですね。とても静かで長閑な場所です。
美しい景色をしばらく楽しみ、御射鹿池を後にしました。
御射鹿池の変貌
私事ではありますが、御射鹿池は僕にとって大変思い出のある場所なんです。
僕は現在東京在住ですが、生まれも育ちも茅野市でして、まさに御射鹿池の近くに住んでいました。
現在の僕の実家は茅野駅の近くにあるのですが、生まれたときから高校生の頃まで過ごしたのは、蓼科の地です。
御射鹿池は県道191号沿いにあり、僕の住んでいたのは国道299号沿い。この二本の道路は繋がっている場所がかなり限られていて、車で行き来するとなるとけっこう不便なのですが、山の中を突っ切ると意外と近いんです。
子供の頃から、御射鹿池をはじめ、近くにある八方台という山や、渋川、横谷観音、王滝など一人で駆け回ったり、弟を連れて駆け回ったり、僕にとってはまるで庭のような遊び場でした。
御射鹿池にもちょいちょい山の中を突っ切って遊びに行ったのですが、当時は人なんて誰もいません。池に遊びに来たときに、誰かに会った記憶は一度もありません。
今でこそ観光地として認識され、多くの人が訪れる場所になっていますが、当時は全く知られていなかったのではないかと思います。
当時から御射鹿池と東山魁夷の話は父親から聞いて知ってはいたのですが、観光スポットとしては認知されていなかったんだと思います。
現在は整備された駐車場もありますが、昔はそんなものはありませんでした。
また、柵があり池の近くまでは行けないようになっているのですが、昔は柵などなく、普通に池の周りを歩いていました。石を投げたりして遊んでましたからね。笑
きっと御射鹿池を遊び場にしていた子供は、僕と弟くらいなのでは?とも思います。笑
僕は今回、20年以上振りに御射鹿池を訪れましたので、20年も経てば色々と変わるものなんだな~と。
子供の頃は単なる遊び場の一つで、景色については特に何も思うことがなかったのですが、大人になってから訪れると、その素晴らしさを実感できるものですね。
とても素敵な場所でした。
木々が映る水面はとても綺麗で、他の季節にも来てみたくなります。
個人的にもとても懐かしい場所である御射鹿池。
足を延ばしてみてよかったです。
諏訪大社との関係
御射鹿池のある茅野市は、諏訪地方の市でして、この辺りは諏訪大社と深い関わりがあります。
全国に一万社以上あると言われている「諏訪神社」の総本社が諏訪大社でして、諏訪大社というのは四つの宮の総称で、そのうちの一つは茅野にあります。大きな柱を引っ張ったり坂から落とす「御柱祭」も諏訪大社のお祭りです。
諏訪大社については、僕は別で書いているこちらのブログでまとめてあります。
そして、御射鹿池自体も、諏訪大社と関係のある場所なんです。
諏訪大社の上社には御頭祭(おんとうさい)という農作物の豊穣を祈る祭事があり、かつては七十五頭の鹿を生贄に献じる祭事でした。その中には必ず耳が裂けた鹿が混じっていたと言われ、諏訪大社上社の七不思議の一つともされています。現在は七十五頭の鹿ではなく、鹿頭の剥製と鹿肉という形になっています。
御頭祭の歴史などは、諏訪大社上社近くにある神長官守矢史料館で展示などされています。
そして、御射鹿池は、御頭祭のための鹿を射る神事「御射山御狩神事」にその名前が由来していると伝えられています。
この地域は神野(こうや)と呼ばれていて、諏訪大明神が狩りをする場所とされていたため、鍬を入れることが許されなかったそうです。
そんな神聖な場所に作られたため池が、現在の御射鹿池です。
僕はそんな神聖な場所を、子供の頃毎日のように走り回っていたわけですね。この記事を書くにあたり、初めて知りました。笑
原田マハ「生きるぼくら」
僕は原田マハさんという小説家が大好きです。
原田マハさんの作品との出会いは、もう10年ほど前になりますでしょうか。彼女著の「カフーを待ちわびて」という小説を何気なく手に取り読んだところ、ハマりました。
それ以来、本屋さんで原田さんの作品で読んでいないものを目にすると、必ず買うように。
先ほど原田マハさんの作品一覧を見たところ、まだまだ全作品を読んでいないことを改めて知ったのですが、それでも3分の2ほどは読んだことがあるかと思われます。
好きな作家さんというのは何人かいるのですが、原田マハさんは僕にとって、そんな作家さんの一人です。
そして僕がこの度、久しぶりに懐かしい御射鹿池を訪れようと思ったきっかけも、原田マハさんなんです。
3年ほど前でしょうか、原田さん著の「生きるぼくら」という作品を読みました。
そして、驚きました。
僕の生まれ育った茅野市が出てきて、さらには蓼科が出てきて、子供の頃の遊び場だった御射鹿池も出てきたからです。
「生きるぼくら」自体とても面白く素敵な作品だったのですが、好きな作家さんの作品の中に、自分の生まれ育った場所が出てきたという偶然に、とてもテンションが上がったことを覚えています。笑
読み終わった僕は、嫁にも「生きるぼくら」を読ませたところ、御射鹿池に行ってみたいと。
その後実家の茅野に帰省するたびに、御射鹿池に行く機会を窺っていたのですが、ようやく今年の5月に訪れることができました。
小説の中のあの人も、こうしてこの景色を見ていたのかな~と、そんな気持ちも加わり、御射鹿池がより素敵な場所に感じた気がします。
御射鹿池を訪れる前には、是非とも原田マハさんの「生きるぼくら」、読んでみてください。
アクセス
御射鹿池の住所は、長野県茅野市豊平奥蓼科(近辺)です。
電車
JR「茅野駅」から、レンタカー、もしくはバス「渋の湯線」で行くことができます。バスの場合は「明治温泉入口」で下車してすぐです。所要時間は約40分です。バスのダイヤは季節によって変わりますので、渋の湯線バスの公式ページにて確認してみてください。
茅野駅から徒歩では困難な距離です。
駐車場
30台ほど停められる駐車場があります。
御射鹿池の公式HPはありません。
以上、茅野市にある御射鹿池について、本日はまとめさせて頂きました。
とても素敵な場所ですので、蓼科観光などに訪れた際には、是非立ち寄ってみてください。