佐藤多佳子『一瞬の風になれ』
僕は佐藤多佳子さんと言う作家さんを、失礼ながらこれまで知りませんでした。ですので当然、その作品も一冊も読んだことがありません。
佐藤多佳子さんを知ったのは、本屋大賞でそのお名前を拝見したことがきっかけです。
僕は読書が大好きでして、本屋大賞の受賞作も数冊は読んだことがあったのですが、そのどれも面白くてたまらないので、どうせなら受賞作を片っ端から読んでみようと。
で、とりあえずは1位の作品で読んだことがないものをリストアップして、ブックオフにて見つけたものから順に読んでいます。中古での購入で申し訳ありませんが…笑。
そんな流れで、2007年本屋大賞1位の作品である、佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』を手に取ることとなりました。
僕は基本、本は文庫本で読む派ですので、『一瞬の風になれ』は文庫で購入。全3巻です。
全3巻と言いますと、そこそこのボリュームがある印象を持ってしまうかとも思うのですが、『一瞬の風になれ』は一冊一冊の厚さもそこまであるわけではありません。
また、ページをめくってみますと、かなり読みやすそうな感じです。おそらく全3巻というボリュームは、実際はあまり感じないのでは?と読む前からですが思ってしまいました。
そして電車通勤の時間を使い、一巻から読み始めたところ…。
その面白さにあっと言う間に小説の中の世界に惹き込まれ、全3巻を驚くほどのスピードで読み終わってしまいました。笑
さすが本屋大賞第1位です。
これは面白い!!
『一瞬の風になれ』の感想
『一瞬の風になれ』は、高校の陸上部を描いた青春小説です。
その中でも中心になるのが、短距離の選手である二人の少年です。
一人は高校に入ってから陸上を始めた主人公と、もう一人は天性の才能を持ったスプリンター。
この二人は友人でもあり、ライバルでもあり、チームメイトでもあるんです。
主人公は常に天才スプリンターである友人の背中を追いかけ、成長して行きます。
そして当然、その過程では様々なことが起こります。合宿、恋愛、喧嘩、兄弟、怪我、などなど、本当に色々なことが。
その一つ一つが、その時々には大きな問題ではあるのですが、全部読み終わって振り返ってみると、どれもこれもあっと言う間の出来事なんですよね。まるで自分がかつて経験した時間、通過してきた過去のような、そんな感覚も持ってしまいました。
陸上を題材に扱った小説というのは、僕は読むのはこの作品が初めてです。
僕は学生時代に陸上部だったこともありませんし、体育の授業以外では陸上というものと深く関わった覚えはありません。
にも関わらず、『一瞬の風になれ』を読んでいますと、まるで自分が学生時代には陸上部に所属し、毎日のように走りこみ、さらにはおもいっきり青春をしていたかのように思ってしまうんです。笑
それくらい、この小説に描かれた世界は、僕の中で鮮明なものとして印象に残りました。
クライマックスとも呼べる最後のリレーのシーンでは、思わずゾクっとしてしまい、鳥肌が立っちゃいました。
素晴らしい小説でした。
『一瞬の風になれ』を読んで、僕は百田尚樹さんの『BOX!』という小説を思い出しました。
『BOX!』は陸上ではなくボクシングの話ですが、ボクシングを始めたばかりの主人公と、天才ボクサーである友人を中心としたストーリーです。
僕は百田尚樹さんも大好きですし、『BOX!』もめちゃめちゃ面白かったので、『一瞬の風になれ』と重なる部分も少なからず感じてしまったんだと思います。
百田尚樹さんと佐藤多佳子さんでは、作風も全然違いますし、『BOX!』と『一瞬の風になれ』は内容ももちろん違うのですが、どちらもスポーツを題材にした高校生の物語で、大傑作だと思います。
気が付くと、熱くなって読んでいる自分がいるんです。
全力で走ってみたくなった
大人になってから、なかなか全力で走る機会というものがありません。
ジムとか通っている人や、日常的に運動をしている人は、意外と走ってたりするんでしょうけれど。
僕のような怠惰で運動不足な人間は、そういう機会がなかなかないんです。笑
散歩は好きなので、けっこう歩いてはいるんですけどね、本気で走るという行為がかなり縁遠くなってしまっているんです。
電車に遅れそうなときとか、たまにそこそこ全力では走りますけれど。笑
あと、若い頃は毎日筋トレもやってたんですけど、いつの間にかそれもやらなくなってしまって、走るどころか体を動かすことすら遠のいてしまっています…。
前項にて『一瞬の風になれ』の物凄くザックリな感想を書かせて頂きましたが、この作
品を読み終わって一番強く思ったのが…
「自分も走ってみたい」
という感想だったんです。
『一瞬の風になれ』では、100m走や400mリレーなど、実際に走っているときの描写がとても細かく描かれていまして、まるで自分が走っているかのような錯覚にも陥ったりします。
そんな場面を何度も見ていますと、自分も速く走れるのでは?という勘違いが生じてくるわけです。笑
自分もまさに「一瞬の風」になれるのではないかと。笑
実際に走ったら、イメージとのズレの大きさにショックを受けることは間違いないと思いますけれど。笑
それでも「走ってみたい」という欲求が、僕の中でかなり大きなものとして芽生えてしまったのは確実です。とりあえずどこか公園でも行けば、全力疾走というのはできそうですので、近々やってみようとは思います。ちゃんと準備運動をして、怪我をしないようにして。笑
さらに欲を言えば、陸上のトラックというものも走ってみたくなっちゃいました。笑
完全に『一瞬の風になれ』の影響ですけれど。
僕は現在東京在住なのですが、実家が長野の田舎でして、家のけっこう近くに陸上競技場があるのを思い出したので…笑。
今度帰省した際にも、こっそり行ってみようと思います。
で、誰もいなかったら、『一瞬の風になれ』の一場面を思い浮かべながら、トラックを激走してやろうと。
佐藤多佳子さんの小説
『一瞬の風になれ』にて、佐藤多佳子さんという小説家を僕は初めて知りました。
僕は何かしら本を読んでそれが面白いと、その作家さんの本を片っ端から読むという習性があります。
ですので佐藤多佳子さんの他の作品も、今とっても気になっているんです。
佐藤多佳子さんは、1989年に『サマータイム』という作品でデビューしています。この作品は、月刊MOE童話大賞というのを受賞しています。
その後も何作品か発表されていますが、その中でも何かしらの受賞作のみにはなりますが、こちらでも紹介させて頂こうと思います。
- ハンサム・ガール
(1993年)
- しゃべれどもしゃべれども
(1997年)
- イグアナくんのおじゃまな毎日
(1997年)
- 黄色い目の魚
(2002年)
- 聖夜 (文春文庫)
(2010年)
- 明るい夜に出かけて
(2016年)
このうち、『明るい夜に出かけて』はまだ文庫になっていないようですが(2018年9月現在)、その他は全て文庫になっています。
僕もまだ『一瞬の風になれ』しか読んだことがないので、次回からブックオフに出掛けた際には、佐藤多佳子コーナーを忘れずにチェックして、一冊ずつ彼女の作品を読んでみようと思います。
以上本日は、佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』の感想を書かせて頂きました、