中村文則さんを「教団X」で知る
僕はこれまで恥ずかしながら、中村文則(なかむらふみのり)さんという作家さんを知りませんでした。
2005年には芥川賞を受賞されている作家さんですので、どこかで名前は聞いたことこそあるかもしれませんが、特に認識することもなく、当然その作品も一冊も読んだこともなく。
きっかけはものすごくありきたりですけれど…
アメトーークの「本屋で読書芸人」です。
(画像出典:tv-asahi.co.jp)
ピースの又吉さん、オードリーの若林さん、オアシズの光浦さんが、お勧めの本などを紹介する内容です。
その番組中にて、又吉さんと若林さんが、中村文則さんの「教団X」を絶賛してたんです。
他にも気になる本は何冊もあったのですが、「教団X」というタイトルが覚えやすいものだったためか、インパクトが大きかったのか、この本が僕の頭にしっかりとインプットされました。
さっそく読みたいところではありましたが、その時点でまだ「教団X」は文庫になっていません。
個人的な習性で恐縮ですが、僕は基本的に本を読むのは文庫なんです。通勤電車の中が僕の読書タイムでして、大きくて重い単行本は持ち運びも大変ですし、かといってまだ電子書籍にもシフトできず…。昔から馴染みのある文庫本を読むという習性が捨て切れないんです。笑
ですので「教団X」は文庫になったら即読もうと。
そして昨年の夏前だったでしょうか。
何気なく立ち寄った本屋さんで、「教団X」が文庫本になり、平積みされているのを発見し、即購入。
正直その時点までは、「教団X」のことはもうすっかり忘れていたんですけどね。笑
平積みの文庫を見た瞬間、思い出しました。あ、これ読みたかった本だ!と。
思っていたよりも分厚く、読み応えはありそうです。
約600ページもありましたので、読み終わるまでけっこう時間が掛かるかな~と思いきや、通勤電車にてさっそく読み始めますと、あっという間に読み終わってしまいました。
そして単刀直入に感想を述べますと、「すごい」の一言がまず出てきます。
抽象的ではありますけれど、「教団X」はもの凄い小説でした。
そして僕はこの「教団X」にて、中村文則さんという作家さんを知ることができました。
「教団X」とはどんな小説?
まず、文庫に書かれているあらすじから引用させて頂きます。
突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。著者の最長にして最高傑作。
僕は「教団X」を読み終わり、果たしてその中身を理解できたのか?と問われれば、正直しっかりは理解していません。
アホなので。笑
ストーリーが理解できなかったとか、そういうわけではないです。「結果的に、この小説はどういったものなのか?」と問われたら、ちゃんと答えることができないです。
本当はこのようなブログで取り上げるのでしたら、ちゃんと説明するためにも、それなりに理解してないといけないのかもしれないですけれど…。僕はまだ一回しか「教団X」を読んでいませんが、二回、三回、四回と読まないと、なかなかしっかりした説明が書けるには至らない気がします。もしかしたらそれだけ読んでも説明なんてできないかもしれません。
もちろん、そもそも小説なんて、理解する必要があるのか?と思ったりもしますけれど。笑
ちゃんと理解こそしていませんが、僕はこの小説が「凄い」小説だと感じました。これはもの凄い本だぞ、と。説得力に乏しいかとは思いますが、とにかく凄い作品だったんです。
「教団X」はそのタイトルのとおり、宗教を中心とした内容です。
二つの宗教団体が登場し、それぞれの宗教に関わる人間たちを軸に物語が展開していきます。
片方は、自然と人が集まってできあがったような、教団とも呼べないユル~い感じの宗教団体。
一方もう片方は、完全なカルト教団。
この二つが対極にあるものなのか、善と悪の二元論的な感じで捉えてしまって良いのか、そこは僕はなんとも言えません。というか、わかりません。笑
果たしてこの二つは対立してたのかな?とも思ってしまいましたので、そこからしてちょっと曖昧なわけです。
しかしながら、ユルい団体の代表である松尾とう人物は、「善」の象徴のような男。
一方、カルト教団の教祖である沢渡という人物は、「悪」の化身のような男です。
松尾vs沢渡という一見対極にある二人の教祖。対極ではありますが、そのどちらにも同じように人間が集まっているんですね。
松尾の方は、松尾が説く教えにかなりのページが割かれています。
そして、この教えがまた凄いんです。デカルトの、「我思う、ゆえに我あり」を否定したり、ヒンドゥー教の教典である「リグ・ヴェーダ」から宇宙誕生、原子や分子や素粒子から脳科学まで、その内容は多岐に渡ります。どれも難しい内容ではあるのですが、めちゃめちゃ興味深かったです。
それに対し沢渡の方は、一言でいいますと「セックス」です。笑
セックスだらけなんです。その描写もはっきり言ってかなりエロいものでして、満員電車の中で読むには、少々後ろの人の視線が気になってしまうレベルです…笑。もちろん沢渡の過去など重要な話もあったりするのですが、基本的にはセックスが中心です。
この二つのどちらの教団にも出入りする人物たちを中心にして、次々と色々なことが起こっていきます。
さらにそこに、政治、思想、戦争やテロなどの内容も加わり、とっても濃い中身になっ
ています。
ページ数も約600ページですので、かなり読み応えがあります。
先ほど僕は、二つの宗教団体、松尾と沢渡が対極なのかどうかわからない、と書きましたが、そこがもしかしたらこの小説の根幹なのかもしれません。
対極にあるようで、実は同じものなのではないかと。
つまり、「人間」について書かれているのではないかと。
二つの団体を行き来する男女を通して、まさに人間そのものだったり、生きるということだったり、そういったものが描かれている小説ではないかと。そんな気もしてしまいました。
しっかり理解しているわけではないので、浅はかな解釈だったらすみません。
「教団X」の何が凄かったのか
「教団X」は凄い小説だと思います。めちゃめちゃ凄いです。ただ悔しいことに、何が凄いのかと言われると、上手く説明できません。
アホですみません。
読み終わってまず最初に僕が思ったのは、「これ書いた人の頭の中はどうなっているんだろう」ってことです。
純粋に、すげーな、ってまず思ってしまったんですよ。
自分基準で考えるならば、こんなものはまず僕には書けないです。もちろん僕は小説家ではありませんが、自分のブログを3つも持っていますし、文章を書くことが日常的ではあります。小説家と比べるのはおこがましいですけれど、「教団X」はレベルが違うと言いますか、もう別次元です。遥かに飛び抜けています。
これを書いた人は天才だとも思いますし、一方で情報の収集や整理の作業などもおそらくハンパないと思いますし、もう凄いとしか言いようがありません。
作者はモンスターではないかと。笑
アメトーークの中で、又吉さんも若林さんも、確か「教団X」のことを「凄い」と言う言葉を使って勧めていた気がしますが、それが僕もよ~くわかります。まず「凄い」って思っちゃうんですよ。
また、又吉さんは「10年に1回あるかってくらいの作品」とも言っていましたが、本当にそれくらいの珠玉の小説ではないかと思います。
馬鹿の一つ覚えみたいに「凄い」を連呼して申し訳ありませんが…笑。
全体を通して僕はそういった感想を持ったのですが、やはり特に多くのページを割いて書かれていた、松尾のお話だったり、セックスの描写については、より強く印象には残っています。
読み終わってすぐに僕はこの本を友人に貸したのですが、どんな内容なの?と聞かれて「エロいよ」と言った覚えがありますし…笑。それだけその部分のイメージが強かったんだと思います。
「教団X」が一体どんな小説なのか、僕はちゃんと理解することも答えることもできてはいませんが、凄い小説だということだけは、自信を持って断言できます。
中村文則さんの小説を読み漁る
「教団X」というとんでもない小説を生み出した作者は、中村文則さん。
1977年生まれの40歳です。
見た目はこんな人です。
(画像出典:city.tokai.aichi.jp)
冒頭でも書きましたが、2005年には芥川賞も受賞しています。
僕は「教団X」を読んで、後悔しました。なぜもっと早くに中村文則さんの本に出会っておかなかったのだろうって。なぜ今まで読まなかったのだろう、と。
知らないって本当に損だな~と改めて思ってしまいました。
アメトーークの本屋芸人で「教団X」を目にすることがなかったら、もしかしたら中村文則さんの本を一生読んでいない可能性もありますからね。
「教団X」に衝撃を受けた僕は、さっそく中村文則さんの本を、片っ端から読みまくります。
古本で申し訳ありませんが、ブックオフに立ち寄った際には、中村文則さんのコーナーはチェックするようになり、これまでに…「遮光」、「土の中の子供」、「悪意の手記」、「掏摸(スリ)」、「迷宮」、「去年の冬、きみと別れ 」と、これまでに「教団X」を合わせて7作品読んだことになります。数ある中村作品を考えれば、まだまだ少ないですけれど。
「教団X」が約600ページと分厚かったのですが、他の作品は意外と薄いものが多くて、どれもあっという間に読んでしまいました。
そして、そのどれも面白いんですよ、これが。
どの作品も全然違うものなのですが、中村文則さんならではの、共通した独特の世界はあります。
基本的に、狂っている人が中心です。笑
僕はまだ中村文則さんの作品を全部読んだわけではいのですが、これまで読んだ中では、個人的には「掏摸〈スリ〉」が良かったですね。
どれもそれぞれの魅力があり、なかなか絞るというのは難しいんですけどね。
まだ読んでいない作品が何冊もありますので、今後も一冊ずつ読み進めていきたいと思っています。
また、最近やったアメトーークの読書芸人(2017)でも、又吉さんが中村文則さんの最新作「R帝国」をお勧めしていたので、こちらもめちゃめちゃ気になります。
「教団X」をきっかけに、中村文則さんの本に出会えて良かったです。
知らずにいるのはもったいない!!
中村文則さん、おすすめです。是非読んでみてください。