笑う門には福来たる

おじさんの四次元ポケット

『天地明察』を読んで、渋川春海の生涯にグッときた話。


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冲方丁『天地明察』

冲方丁さんの『天地明察』を読みました。

僕が冲方丁さんの作品を読ませて頂いたのは、これが初めてです。

そもそも大変失礼ながら、冲方丁さんという作家さんの存在自体、これまでちゃんと知りませんでした。

なんとなくお名前はお見掛けしていて、頭の隅には残っていたのですが、その読み方すらわからず…。正しくは「うぶかた とう」さんとお読みするのですが、勝手に「おきかた ちょう」さんかと思っていました。笑

このたび冲方丁さんの本を初めて手に取ったきっかけは、本屋大賞です。

僕は元々読書が好きでして、それなりのハイペースで日々本を読んでおります。ジャンル問わず、面白そうだと思ったものは片っ端から。

で、最近になって本屋大賞の入賞作を全部読んでみたくなり、まずは1位になったものから読み漁っておりました。

自分でこんなまとめまで作っています。笑

『天地明察』は、2010年の第7回の本屋大賞にて、1位を受賞した作品です。

僕は電車の中で本を読むことが多いので、基本的に購入するのは文庫が中心です。7~8割は古本で購入するというパターンでして、行きつけのブックオフが何ヶ所かあります。

本屋大賞作品を制覇しようとブックオフに行く度に、リストを片手にお目当ての本を入手していったのですが、『天地明察』がなかなか見つけられなかったんです。何度お店に足を運んでも。

最初は冲方丁さんを「おきかた ちょう」さんだと思っていたので、「お」のところばかり探していて、見つかるわけがないんですけどね。笑

その後、ちゃんとお名前を「うぶかた とう」さんだと認識して、「う」のところを探しますと、冲方丁さんの作品はちょいちょいあるのですが、『天地明察』が見つからず。

そんな状態を数ヶ月続けたある日、立ち寄ったブックオフの「歴史小説」のコーナーにて、なんと『天地明察』を発見しました。もしかしたらずっと前からこちらにあったのではないかと。笑

歴史小説のコーナーにも冲方丁さん、そうではないコーナーにも冲方丁さん。そういうの、やめて欲しいんですけどね。笑

とにかくようやく『天地明察』を見つけた僕は、さっそく購入。

『天地明察』は文庫ですと上下2巻です。

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渋川春海と日本の改暦

『天地明察』は江戸時代のお話です。

渋川春海(しぶかわはるみ)という、実在した人物の生涯を描いた物語です。

渋川春海は天文暦学者で、囲碁棋士でもあります。

江戸時代には、碁方や碁打ちと呼ばれる、囲碁を生業とする棋士たちがいました。本因坊家、井上家、安井家、林家という四家が碁の家元で、渋川春海はそのうち安井家の長子です。

春海は碁の腕前も一流でしたが、算術に大きな興味を持っていて、それが高じて日本の改暦という、大きな役目を担うことになるんです。

暦というのは、「こよみ」です。いわゆるカレンダーです。

ですので改暦というのは、カレンダーを改めること、つまり新しいものにすることを指します。

当時の日本では、中国からもたらされた「宣明暦(せんみょうれき)」というものが使われていました。しかしながら長年使われてきた宣明暦に誤差が生じ、年々それが大きくなってきたため、幕府は改暦の必要に迫られるんです。

それを任されたのが渋川春海でして、彼は多くの人間に支えられ、力を借り、何年もの歳月を掛けて、ついに新しい「大和暦」を完成させます。

その過程は、大変な苦労を伴うものでした。

渋川春海の完成させた大和暦は、当時の元号から「貞享暦(じょうきょうれき)」と命名され、日本独自の和暦にて初めて、全国の暦が統一されることになったんです。

暦を完成させるために注ぐ情熱や、それに関わる人たちの想い。

さらには政治的な背景だったり、権力闘争だったり、そういったものも絡んだきたりして、改暦がいかに大変な事業だったのか。

僕はこの本を読んで、渋川春海という人物がいたこと、江戸時代に行われた改暦というもの、どちらも初めて知りました。

そして、改暦を成し遂げた渋川春海の生涯に、グッときてしまいました。

いい小説を読ませて頂きました。

 

カレンダーの見方が変わる

カレンダーというものは、日常生活の中に当たり前のようにあるものかと思います。

僕も自室の壁にはカレンダーを掛けていますし、仕事場にも卓上カレンダーがあります。また、スマホや手帳のスケジュールなんかも、当たり前のようにカレンダー形式です。

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そんなカレンダーを、僕は今まで特別な感情で見たことはありません。

もちろん、カレンダーの中の「特定のある一日」を、特別な日として見ることはあるかもしれませんけれど、「カレンダーそのもの」をそんな目で見たことはない、という意味です。

しかしこのたび『天地明察』を読んだことで、このカレンダーの暦が出来上がるまでには、多くの人のとんでもない苦労があったんだろうな~と。

そしてしばらく、そんな目でカレンダーを見つめ、嫁に気味悪がられたりもしていました。笑。

カレンダーに限ったことではありませんが、現在当たり前のように使っている様々なものは全て、先人たちの知識や苦労の上に成り立ってるものなのだな~と、改めてそんなことも思ってしまいました。

カレンダーも、その陰には暦に生涯を掛けた人たちがたくさんいたんです。

そんな人たちの知識の積み重ねを、僕たちは当たり前のように享受しているわけです。

もちろん、いちいち全てのことをそんなふうに考える必要はないとは思いますし、考えても仕方ないですけれど、たまには思い出してみるのも悪くないのでは、と思います。

少なくとも僕は、江戸時代の改暦、それを成し遂げた渋川春海について知ることができて、ちょっと得した気分になりました。笑

 

『天地明察』は映画化も

僕は全く知らなかったのですが、なんと『天地明察』は映画化もされています。
映画の公開は2012年で、本屋大賞を受賞した約2年後です。

 

これは是非とも見てみたい。

主人公の渋川春海を演じているのは、岡田准一さん。

その奥さんであるえん役には宮崎あおいさん。

岡田准一さんと宮崎あおいさんは、2017年12月にご結婚もされていますね。これがきっかけだったのでしょうか?

他には、中井貴一さん、佐藤隆太さん、市川染五郎さん、市川猿之助さん、染谷将太さん、松本幸四郎さん、岸部一徳さん、笹野高史さんなど、かなり豪華な俳優さんが出演されています。

さらにはプロレスラーの武藤敬司さんも出演されています。笑

ストーリーも、小説とは違った結末が用意されているようでして、余計に観てみたくなりました。

また、僕は神社巡りがちょっとした趣味でして、そのブログも書いているのですが、『天地明察』では渋谷にある「金王八幡宮」という神社が重要な場所として登場します。

こちらは僕が書いている神社ブログの、金王八幡宮の紹介です。

どうやら映画でも金王八幡宮は登場し、ロケ地にもなっているようですので、そちらも興味津々です。

映画版の『天地明察』、近々観てみようと思います。

 

冲方丁さんの小説

僕が『天地明察』にて初めて出会った、冲方丁さんという作家さん。

僕はまだ一冊しか読んでいませんが、他の作品も気になるところです。と言いますか、『天地明察』が素晴らしかったので、気になるのは当然ですよね。

冲方丁さんは、1996年、早稲田大学在学中に、『黒い季節』という小説でデビューしています。こちらは角川スニーカー大賞の金賞を受賞しています。

 

その後、2003年の『マルドゥック・スクランブル』という作品で日本SF大賞を受賞。

 

こちらの記事で紹介した『天地明察』では、本屋大賞だけではなく、吉川英治文学新人賞、舟橋聖一文学賞、北東文芸賞を受賞し、直木賞にもノミネートされています。

そして2012年の『光圀伝』では山田風太郎賞を受賞。

 

などなど、とりあえず何かしらの受賞暦のある作品を上記に紹介してみましたが、この他にも何冊も出されています。

上記の中で『光圀伝』は『天地明察』と同じく歴史ものですが、『黒い季節』や『マルドゥック・スクランブル』は、ジャケだけ見ても、かなり違った感じの作品なのではないかと思われ、とても興味が湧きました。

僕も次は、『黒い季節』か『マルドゥック・スクランブル』をブックオフにて探してみようと思います。

冲方丁さん未体験の方は、まずは僕と同じく『天地明察』からいかがでしょうか。

読みやすいですし、とっても面白い小説でした。

そして何より、渋川春海という人物とその生涯について知ることができたこと、冲方丁さんに感謝したいです。

ありがとうございます。

 

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