森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」に出会う
森見登美彦さん作の「夜は短し歩けよ乙女」という小説を読みました。
そして、衝撃を受けました。
強烈にぶっ飛んでる作品でして、めちゃめちゃ面白かったんです!!
正直、びっくりしました。笑
僕は森見登美彦さんの作品を読むのはこれが初めてです。失礼ながらそのお名前もなんとなくしか存じ上げていませんでしたし、どんなものを書いているのかも全く知りませんでした。森見登美彦は「もりみとみひこ」と読むようです。
彼について全く知識はありませんでしたが、「夜は短し歩けよ乙女」というタイトルに関しては、どこかで耳に、あるいは目にしていたものと思われ、頭の隅にその名前が残っていたんです。
2007年に山本周五郎賞、直木賞候補、本屋大賞2位という経緯もあるようですので、そこで名前を覚えていたのかもしれません。
僕は読書が好きでして、だいたい週に2~3冊のペースで本を読んでいるのですが、本屋さんや古本屋さんにもよく立ち寄ります。最寄のブックオフにも頻繁に出入りしているのですが、ある日店内を徘徊して本を漁っておりますと、100円コーナーにて「夜は短し歩けよ乙女」が目に入りました。
どんな作品か全くわからなかったのですが、100円ですし、なんとなく名前も聞いたことあるし、失敗したらしたでいいや、という軽い気持ちで購入しました。
一応買うときに、後ろに書かれた紹介文には目を通したのですが、「あー、恋愛小説かー」くらいにしか思っていませんでした。
ところがどっこい。
そんな甘いもんじゃなかったです。笑
予想外のぶっとんだ内容、展開、世界観。どれも独特なものがあり、素晴らしかったです。
強烈でした。
衝撃的な本と出会ってしまいました。
先輩と黒髪の乙女の恋
「夜は短し歩けよ乙女」は、いわゆる一般的な恋愛小説とはだいぶ趣を異にするかとは思いますが、それでも恋愛小説ではあるかと思います。笑
ファンタジーと言えばファンタジーでもあります。
物語は、大学でサークルの後輩である「黒髪の乙女」に恋する「先輩」の物語です。語り手が先輩になったり、黒髪の乙女になったり切り替わって進行していく形です。それぞれの視点で一人称で。
いわば、主役はこの二人です。
二人それぞれの主観で書かれた物語が絡み合ってできあがっている形ですので、二人ともが主役だと思います。
そしてこの小説には、主役の二人に名前がありません。
「先輩」と「黒髪の乙女」です。笑
他の登場人物には、みんな名前とかあだ名とか出てきてるんですけどね。
そんな二人の物語が、以下の4つのストーリーで収められています。
- 第1章:夜は短し歩けよ乙女
- 第2章:深海魚たち
- 第3章:御都合主義者かく語りき
- 第4章:魔風邪恋風邪
4章どれも文句無しで面白いです。ぞれぞれ章ごとに全く違った場面での、先輩と黒髪の乙女の物語が描かれています。
共通しているのは、どれも「ぶっ飛んでいる」という点でしょうか。笑
僕は完全に普通の恋愛小説だと思って読み始めたのですが、もう読み始めてすぐに、あれ?これは様子がおかしいかも?と思ってしまいましたからね。笑
どんなふうにぶっ飛んでいるのかは、もう読んで頂くのが一番早いかとは思います。僕が上手く説明できないと言うのはあるのですが、世界観が独特です。
敢えて挙げるなら、町田康さんのぶっ飛び方に少し通じるものがあるかもしれません。文体とかは違うんですけど、表現では通じるものがある気がしました。
そんなぶっ飛んだ素晴らしい世界観に加え、黒髪の乙女がめちゃめちゃ可愛いんです。これは好きになってしまいます。笑
本の中では第4章までしかありませんでしたが、僕は永遠にこの二人の物語を読んでいたくなりました。笑
舞台は京都
「夜は短し歩けよ乙女」の舞台は京都です。
京都大学と思われる大学や、その周辺を舞台としている作品とのことです。
つい最近のことですが(2018.2.25)、京都大学の学生と思われる若者たちが交差点でこたつを囲んで鍋をした、という事件がありました。
僕はこのニュースを聞いたとき、真っ先に「夜は短し歩けよ乙女」を思い浮かべたんです。
何故かと申しますと、第3章の「御都合主義者かく語りき」の中に、「韋駄天コタツ」というものが出てくるのですが、京都の交差点のニュースはまさにこれを真似たのでは?という内容だったからです。
百万遍という交差点での出来事だったようで、作中にも百万遍という名前が出てきます。
僕は東京在住でして、京都には全く詳しくはないのですが、先斗町、下鴨神社、糺の森、吉田神社など作中に出てきた場所も実際にある場所とのこと。
それを知ってしまったら、聖地巡礼がしたくなってしまいました。笑
例えば、第2章の「深海魚たち」では、下鴨神社の境内にある糺の森で開催されている古本市が舞台なんです。
実際に同じ場所にて古本市が毎年開かれているとのことで、その画像がこちらです。京都古書研究会の公式ブログさんから引用させて頂きます。
(画像出典:koshoken.up.n.seesaa.net)
この画像を見ただけで、行ってみたくてたまらないです。笑
この古本市の中に先輩と黒髪の乙女がいたのかと想像すると、ワクワクしてしまいます。
僕は大人になってからはまだ一度しか京都旅行には訪れていませんので、近々計画してみようかと思います。
「夜は短し歩けよ乙女」の聖地巡礼も兼ねて。
2017年に映画化
僕が「夜は短し歩けよ乙女」に出会い衝撃を受けたのは、つい先日(2018年3月)なのですが、なんとその前年、2017年にこの作品はアニメ映画として公開されていたんです。
(画像出典:eiga.k-img.com)
全く知りませんでした…。
しかも、日本アカデミー賞最優秀アニメーション映画賞を受賞しちゃってるみたいなんです。
これは見たい。ぜひにでも見たいです。
小説を読んでイメージした世界が、アニメではどんな描かれ方をしているのか、あのぶっ飛んだ世界観がどうなっているのか、今すぐにでも見たいです。笑
先輩の声は星野源さん、黒髪の乙女は声優の花澤香菜さんです。また、パンツ総番長というのがいまして、その声がロバートの秋山竜次さんというのも気になります。笑
映画館での上映はとっくに終わってしまっているので他の手段で見るしかありませんが、是非とも近々見てみようと思います。ブルーレイでは特装版なんてのも出ていますので、これもまた気になります。
森見登美彦さんへの興味
僕は気に入った本に出会いますと、その作家さんの本を片っ端から読み漁る傾向があります。
一冊読んで、これは凄い!これは面白い!と思ったら他の作品も全部読んでみたくなっちゃうんです。で、結果的に文庫になっているものは全て制覇してしまっている作家さんも何人かいます。
そして僕にとっての森見登美彦さんは、早速その対象になりました。笑
「夜は短し歩けよ乙女」で衝撃を受けてしまったので、これはもう是非他の本も読んでみたいと、当然の如くそうなります。
まだ「夜は短し歩けよ乙女」を読んだ直後ですので、他の作品には一冊も手を出していません。手を出していないどころか、まだどんな作品があるのかも知らない状態です。笑
「夜は短し歩けよ乙女」が発表されたのは2006年です。現在は2018年ですので、もう12年も前ということになります。そんなにも長い間、こんな素晴らし作品の存在を知らなかったとは…。
きっとその間に、他の作品もたくさん出ているんだろうな~と。
ですのでこの記事を書きつつ、森見登美彦さん作品を調べてみましたところ、当然ながらけっこうありました。
2018年3月現在で、小説だけで14作品、エッセイなどが6作品、その他アンソロジーなど数えますとまだまだあります。
「夜は短し歩けよ乙女」が山本周五郎賞を受賞したことは前述もさせて頂きましたが、他にも4作品受賞作がありますので、そちらだけ紹介しておきたいと思います。
- 『太陽の塔』(2003年・日本ファンタジーノベル大賞受賞)
- 『ペンギン・ハイウェイ』(2010年・日本SF大賞)
- 『聖なる怠け者の冒険』(2014年・京都本大賞)
- 『夜行』(2017年・広島本大賞)
この他にも魅力的なタイトルがいくつもありまして、それを見ているだけで読んでみたくてウズウズしてきます。笑
「夜は短し歩けよ乙女」という素晴らしくぶっ飛んだ作品に出会えましたので、これを機に森見登美彦さんの本を読み漁ってみたいと思います。
とにかくまずは『夜は短し歩けよ乙女』。
めちゃめちゃ面白いこと間違い無しですので、是非読んでみてください!